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平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

令和7年11月19日(水)~21日(金)にパシフィコ横浜にて
EdgeTech+2025 の「IDEC横浜パビリオン」に出展しております。

お近くにお越しの際は、是非弊社のブースにもお立ち寄りください。
心よりお待ち申し上げております。

今回の実験

今回は前回のエミッタ接地増幅回路を使って、スピーカーから音を出力します。
またその際に考慮すべき点を考察します。

■実験方法
1.以下の回路図のように前回のエミッタ接地増幅回路を使い、トランジスタのコレクタに
 100μFのコンデンサを介してスピーカーを接続します。


実験回路図

2.いったんスピーカーの片側をはずし(Vout端子オープン)、入力信号に正弦波1kHzを入力します。
 その後、コレクタ電圧が2.5Vp-p程度になるように半固定抵抗器VRを調整します。

3.スピーカー端子を接続し、スピーカーからの発音状態とコレクタ電圧Vcの波形を観察します。

4.以下のように抵抗を変更し、同様にスピーカーからの発音状態とコレクタVcの波形を観察します。
   Re:100Ω→10Ω 、 RL:1kΩ→100Ω
 (実験回路の電圧増幅率はRL/Reです。同じ比率の抵抗値変更ですので電圧増幅率は
 同じ結果が得られると想定できます。今回はその正しさを確認します。
 厳密には抵抗値の変更で動作点も変化しますが、今回は考慮せずに進めます。)

■実験結果
1.以下のようにブレッドボード上に回路をつくりました。
ブレッドボード写真

2.実験方法2に従って、スピーカー端子の片側の接続を外し、1kHz信号を入力後に
 半固定抵抗器を調整し約2.5Vp-pに合わせました。
オシロ写真

3.実験方法3に従ってスピーカー端子を接続し、スピーカーの発音状態と波形を確認しました。
 スピーカーからは、小さな音が鳴っていることが確認できました。
 コレクタ電圧Vcの波形は、実験方法2と比べかなり正弦波が小さくなっていることが分かりました。


4.実験方法4に従って抵抗ReとRLを変更し、スピーカーの発音状態と波形を確認しました。
 スピーカーの音が実験方法3と比べて少し大きくなることが分かりました。
 また、コレクタ電圧Vcの正弦波も少し大きくなっていることが分かりました。
オシロ写真

<考察>
今回の回路でスピーカーを駆動し発音できることが分かりました。
しかし、音は小さく、また同じ電圧増幅率であっても異なる結果になりました。

出力段の電流を考察してみます。
電源から供給される電流は図1のように抵抗RLを通ったあとに2つに分かれます。
前回実験から電流はバイアス電流(直流)と正弦波が増幅された電流(交流)が足し合わさったものになります。
コンデンサC2がありますので、直流成分はスピーカー側へは流れません。そのため、直流成分であるバイアス電流はすべてトランジスタ側に流れます。(動作点は変わらない)


一方で、交流成分を考えます。
コンデンサC2の1kHzのインピーダンスは約1.6Ω程度になります。そのため図2のように交流信号は抵抗RLを通じてスピーカーに供給されることになります。
抵抗RLは1kΩですので、抵抗分割の結果、スピーカー側の電圧は小さくなることが分かります。
つまり、回路にスピーカーを接続した場合、内部抵抗の大きな交流信号源に小さな負荷抵抗をつないだことと同じような状況になります。
実験方法4でRLとReをそれぞれ小さい値に変更すると、スピーカーの音が大きくなりました。これもこの関係から理解できますね。(交流信号源の内部抵抗を小さくしたことと同じ)

図2:交流の回路図
今回はエミッタ接地増幅回路で直接スピーカーを鳴らしました。
しかし、実験結果からわかるように、エミッタ接地増幅回路は電圧増幅に適していますが、低いインピーダンス(≒重たい負荷)の駆動には向いていません。
スピーカーのような低いインピーダンスのものを駆動する場合は、エミッタ増幅回路の後段にエミッタフォロワ回路を入れることでしっかり駆動できるようになります。

今回の実験部材

スピーカー
スピーカー写真
スピーカーは電気信号を振動に変換することで、耳や身体で感じる音をつくり出す装置です。
音楽信号などは複数の周波数の電気信号で表すことができ、それをアンプで増幅しスピーカーに送られ音を発します。
スピーカー内のコイル(銅線やアルミ線を巻いたもの)に電流が流れると、磁石の磁界によるフレミングの左手の法則で力が発生し、コイルに機械的に固定されている振動板(紙やプラスチックなどで円錐状のものが多い)を動かします。 振動板が前後に動くことで空気を圧縮し音が発生します。
スピーカーの振動板の前後は逆の位相の音が出ていることになりますので、そのままでは前後の音を打ち消してしまいます。そのため、スピーカーは木製やプラスチックの箱(エンクロージャー)に取り付けるのが一般的です。 エンクロージャーには密閉型やバスレフ型など目指す音に合わせていろんな方式があります。

今回の実験

前回の「BJT増幅回路の原理」では、シンプルなエミッタ接地増幅回路の直流動作を観測することで増幅原理を学びました。
増幅回路は交流信号を増幅することが主目的ですので、今回は標準的なエミッタ接地増幅回路で交流波形を観測し増幅動作の理解を深めます。
実験の前に、以下の図をもとに前回と今回の違いを整理してから始めたいと思います。
前回はベース電圧Vbとコレクタ電圧Vcの直流電位の変化をプロットしました。これによりVbの変化に対してVcが大きく変化(≒増幅)することが分かりました。
今回は前回の回路をもとに、より実用的な回路で実験します。

前回からの主な変更点は以下です。
①抵抗分割を使ってベース電圧に直流電位を与えます。
 これは増幅回路の動作点を固定する目的です。バイアスを与えるとも言います。 
 (今回の電源電圧は+5Vですので0~5Vの範囲を超えての増幅はできません。
 そのため交流を増幅する場合、交流的な基準(=動作点)をどこに設定するかを
 決める必要があります。)
②コンデンサを通じて交流信号である正弦波をベース電圧に重畳します。
 これによりコレクタ電圧から増幅された信号がでてくるか?を確認します。

前回実験と今回実験の違い
前回はエミッタ接地の原理的な回路で直流動作を確認
今回は実用的なエミッタ接地増幅回路で交流動作を確認
※今回の実験回路では、上記の変更点に加えて
③エミッタとグランド間に抵抗(以降、エミッタ抵抗と呼ぶ)を入れています。
 このエミッタ抵抗は負帰還の役割を果たし回路を安定化させる効果があるため、
 実用的なエミッタ接地増幅回路では組み込むことが一般的です。
 エミッタ抵抗の役割は考察の後半で深堀します。

■実験方法
1.以下の回路図をブレッドボード上につくります。 

今回の実験回路図
2.半固定抵抗器を左いっぱいに回し正弦波信号を入力しない状態で、ベース電圧Vb、
 エミッタ電圧Ve、コレクタ電圧Vcを測定します。

3.入力端子に正弦波信号1kHzを入力し、半固定抵抗器をゆっくり右に回し、
 ベース電圧Vbとコレクタ電圧Vcの波形をオシロで観測します。 

4.正弦波信号を100Hz、10kHzに変更し、それぞれの信号での波形の変化を観測します。

5.波形の観測や電圧の測定結果から考察します。

■実験結果
1.以下のようにブレッドボードに回路をつくりました。
ブレッドボードへの実装写真
2.実験方法2の各直流電圧は以下の測定結果となりました。
ベース電圧、エミッタ電圧、コレクタ電圧の測定値
3.実験方法3でのオシロの観測波形は図1のようになりました。
 ベース電圧Vbとコレクタ電圧Vcの波形が上下反転していることが分かりました。
 これはVb-Vc特性が負の傾きであるためです。(詳細は前回実験参照)

図1:実験方法3の観測波形の例
 入力波形と出力波形は上下反転
半固定抵抗器を右に回していくと、図2から図3のようにベース電圧Vbが大きくなるとともにコレクタ電圧Vcが大きくなることが観測できました。
さらにベース電圧Vbを大きくしていくと、図4のようにコレクタ電圧の下側の波形がクリップする(つぶれる)ことが分かりました。

図2:入力小 Vb=0.07Vp-p
図3:入力中 Vb=0.29Vp-p
図4:入力大 Vb=0.46Vp-p
  入力大では出力波形がクリップ

4.実験方法4に従って正弦波信号を100Hz、10kHzに変更し波形を観測しました。
 図5~図7のように周波数を変更してもコレクタ電圧の振幅は変わらないことを
 確認しました。(増幅率の周波数特性はほぼフラットであることが分かりました)

図5:1kHz
図6:100Hz
図7:10kHz

5.考察します
<コレクタ電圧Vcの波形クリップを考察>
実験方法3で入力電圧を大きくすると、図4のようにコレクタ電圧波形の下側がクリップしました。
クリップ波形を考察するために、前回実験と同様に今回の実験回路でのベース電圧Vbとコレクタ電圧Vcの直流特性を測定し、実験方法2で測定した動作点をプロットしました。(図8)
そのベース電圧の動作点に0.46Vp-pの信号を加えると、コレクタ電圧の下側は線形部分を超えてクリップすることが分かります。 上側波形がクリップしていないのはまだ線形の範囲のためであることも分かりました。
クリップしにくくするためには、Vbの動作点をVcの線形性が保てる中心に設計するのがよいですね。 今回の例では図9のようにVbの動作点をもう少し低い電圧に設定するとよいと思われます。

図8:出力波形がクリップすることの解説
図9:動作点を動かし出力波形がクリップしないことの説明

<エミッタ抵抗の考察>
冒頭でエミッタ抵抗が負帰還の役割を果たすと記しました。その負帰還動作のイメージを図10に記載しました。
図10:エミッタ抵抗が負帰還の働きをすることの説明

以下、エミッタ抵抗の負帰還がどのように特性に影響するかを増幅率で検証しました。
図13と図14のように、エミッタ抵抗を入れることで増幅率は低下しますが、横軸の入力電圧に対しての増幅率の変化は小さくなっており、入力信号に対する出力の線形性(直線性)が高まっていることが読み取れます。(理想は増幅率一定)
この線形性が高いということは、入力波形に対して出力波形が変化しにくい(歪が小さい)ということになります。

図11~図14:エミッタ抵抗の負帰還で、増幅率の線形性が向上することの説明

エミッタ抵抗による負帰還の効果は、上記のような線形性の改善による歪の低減以外にも以下のようなメリットがあります。
・熱安定性の向上(トランジスタ自体の電流増幅率の熱変化を吸収)
・増幅率のばらつき低減(エミッタ抵抗がない場合はトランジスタ自体の増幅率が支配的で、そのトランジスタの増幅率はばらつきが大きい。 エミッタ抵抗を入れた場合の増幅率≒RL/Reとなり、抵抗値で決定できる。  ※今回の回路では、増幅率RL/Re = 1kΩ/100Ω = 10倍 ≒ 20dB)
以上のような効果から、エミッタ接地増幅回路ではエミッタ抵抗を入れることが一般的です



今回の実験

BJT(バイポーラトランジスタ)を使った増幅回路の原理を実際に測定して勉強します。


BJTの増幅原理はベース電流Ibに対して電流増幅率βに比例したコレクタ電流Icが流れることでした。
今回は原理の確認のためエミッタ接地回路を直流で動作させ、ベース電流に対してコレクタ電流の変化(電流増幅に相当)、ベース電圧に対してのコレクタ電圧の変化(電圧増幅に相当)を測定し動作を検証します。
 ※交流動作については次回確認します

■実験方法
1.以下の回路図をブレッドボード上につくります。 
   ※エミッタをグランド側に接続するためエミッタ接地回路と呼びます


2.半固定抵抗器VRを調整し、ベース電圧Vbを0.58V~0.8Vまで0.01Vステップ程度で変化させます。
 その際にベース電圧Vbの変化とともに、半固定抵抗端電圧Viとコレクタ電圧Vcを記録します。
 抵抗Rbを流れるベース電流Ibと抵抗RLを流れるコレクタ電流Icを以下の式から求めます。
 また、求めた各電流値から電流増幅率βを求めます。
   (参考:電流増幅率はトランジスタ仕様書ではhFEと記載されています)
ベース電流 Ib=(Vi-Vb)/Rb
コレクタ電流 Ic=(5V-Vc)/RL
電流増幅率 β=Ic/Ib
3.抵抗RLを100Ωから1kΩに変更し、実験方法2と同様に測定および計算を行います。

4.測定結果をグラフにまとめて考察します。

■実験結果
1.実験回路を以下のように準備しました。



2.実験方法2および3の手順で抵抗RL=100Ωと1kΩのときの各電圧の測定と電流を計算しました。

3.実験方法4にしたがって上記の測定結果を以下のグラフにまとめてみました。
  上のグラフ:ベース電圧対コレクタ電圧、 下のグラフ:コレクタ電流に対する電流増幅率
  左のグラフ:RL=100Ω、 右のグラフ:RL=1kΩ

上のグラフはベース電圧に対してのコレクタ電圧の変化を表しています。
したがって傾きの大きさが電圧増幅率を意味しています。
(例えば左のRL=100Ωの図の場合、Vb=0.7Vを中心に0.02V変化させたとすると、Vcは3Vを中心に1Vくらい変化することになります。 つまりVbに対してVcは50倍変化していることになりますね。 参考ですが、この説明のような動作させる中心を動作点と呼びます。)
この図は負の傾きなのでイメージしにくいですが、傾きが負ということはベース電圧が大きくなるとコレクタ電圧は小さくなるということなので、交流で考えると位相が反転していることになりますね。
※位相が反転するのは回路図から予想できます。コレクタ電圧Vcは以下の式となります。
コレクタ電圧Vc=5V-(抵抗RL*コレクタ電流Ic)これはコレクタ電流が大きくなると、抵抗RLでの電圧降下が大きくなりVcが低下することを意味します。 つまりIbやIcが増加するとVcは低下するという逆の動きなので位相が反転しているということですね。

一方で、下のグラフはベース電流とコレクタ電流の比である電流増幅率βです。
ベース電流は非常に小さいので、測定誤差の影響を受けていますが、概ねコレクタ電流が変化しても一定(グラフでは水平)、かつ抵抗RLを変えても概ね同じ値であることが分かります。
※今回のトランジスタではβは310程度でした。 電流増幅率が一定ということでトランジスタが電流増幅の機能を果たしていることが確認できました。 ただ、コレクタ電流を大きくするとβが低下するため、電流増幅には限界があることも分かりました。

もう少し上側のベース電圧対コレクタ電圧のグラフの深堀りをしました。
傾きが電圧増幅率になりますので、上記のグラフを微分すれば電圧増幅率のグラフを描くことができます。 今回は多項式近似で関係式をもとめ微分計算しその結果をプロットしてみました。
動作点(ベース電圧Vbやベース電流Ibをどこに設定するか)により電圧増幅率が変化しています。また抵抗RLが大きい方が電圧増幅率が高いことも分かりました。
今回の測定では最大増幅率は6dB程度の差なので、RL=1kΩ時とRL=100Ω時のそれぞれの回路に同じ入力電圧を加えた場合のコレクタ電圧は、RL=1kΩ時が2倍くらい大きくなります。
 ※電圧の2倍をdB表示にすると、20xLog(2倍)≒6dBになります

今回の実験部材

バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタとは、トランジスタの一種で、半導体のpn接合によって構成されたトランジスタのことです。
一般的に「トランジスタ」といえばバイポーラトランジスタを指していることも多いです。
バイポーラトランジスタには、ベース、エミッタ、コレクタの3つの端子がついています。ベースに流れる電流に応じてコレクタに電流が流れることを利用して回路を構成します。
(ベースに電流が流れると、コレクタはそれに応じて電源から電流を持ってくるイメージ)
バイポーラトランジスタにはpn接合の構造によってnpn型とpnp型に分けられます。npn型とpnp型は電流の流れる方向が逆になります。
バイポーラトランジスタは回路構成で電圧増幅にも電流増幅にも活用でき、また生産コストも安価であることから、多くの電子回路に利用されています。
なお、バイポーラトランジスタは電子と正孔の2種類のキャリアを持つため、2つを意味するバイの名がついています。 これに対して電界効果トランジスタ(FET)は電子か正孔のいずれか1種類を扱うので、ひとつを意味するユニを使いユニポーラトランジスタとも呼ばれます。

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今回の実験

今回はコンデンサに電荷が蓄えられていく過程や電荷を放出していく過程を観測します。

■実験方法
1.図のように、コンデンサCと抵抗Rとプッシュスイッチ2個をブレッドボード上に配線します。


2.電源を投入し、プッシュスイッチ②のみを押し、コンデンサCの電圧を0Vにします。
3.プッシュスイッチ②を離しプッシュスイッチ①を押すと、5V電源から抵抗Rを通りコンデンサCに
 電荷が供給されコンデンサCの電圧が上昇し、電圧計Vの表示が5Vに近づいていくことを
 観察します。
4.プッシュスイッチ①を離しプッシュスイッチ②を押すと、逆にコンデンサCの電荷は抵抗を通じて
 放出されコンデンサCの電圧は低下し、電圧計Vの表示が0Vに近づいていくことを観察します。
5.抵抗Rを10kΩ・1kΩに変更、またコンデンサCを10μF・1μFに変更し、上記の2~4を同様に
 行い電圧計Vの変化を観察します。
6.電圧計Vを5Vにしプッシュスイッチ①②を押さない状態で電圧値を観測します。

■実験結果
・実験方法1~4を実施します。 プッシュスイッチ①を押すと電圧計Vの表示が増加し、プッシュスイッチ②を押すと電圧計Vの表示が減少していくことが確認できました。
増加と減少の傾きは一定ではなく、それぞれ増加時は5Vに近づくと緩やかに、減少時は0Vに近づくと緩やかになることが分かりました。

接続状態

プッシュボタンを押した状態

・実験方法5の抵抗とコンデンサの値を変化させると以下のような違いが分かりました。

・実験方法6については、電圧の変化がおきませんでした。

■考察
電荷が蓄えられ電圧が変化する速さはCRの積で決まります。
CRの積は時定数と呼びます。実験方法5のそれぞれの組み合わせの時定数を以下の表に示します。

実験方法6の結果では電圧の変化はおきないとしましたが、実際には少しずつ電圧が低下していきます。 それは電圧計側などにもコンデンサから電荷が流出していくためです。
(電圧計には大きな内部抵抗があります。そのため時定数も大きくなりますので、かなりゆっくり電圧低下します)

今回の実験部材

■プッシュスイッチ

プッシュスイッチは、ボタンを押すことで内部の接点を開閉する部品です。
ボタンを押している間は接点が接触し導通、離すと断線するモーメンタリ型と、ボタンを押すことで導通と断線が繰り返されるオルタネート型(保持型)の2種類があります。
いずれも様々な電子機器に使用されています。
スイッチはプッシュスイッチ以外にも動作方式の違いで、スライドスイッチ、ロータリースイッチ、トグルスイッチなど多くの種類があります。

今回の実験

半固定抵抗器と電圧計を使用して簡易的な可変電圧電源をつくり、半固定抵抗を調整することで電圧の変化を観測する実験です。

■実験手順
1.図のようにブレッドボード上に回路をつくります。

2.電源を投入し、半固定抵抗を左いっぱいに回すと電圧計の値が0Vであることを確認します。

3.半固定抵抗をゆっくり右に回しながら、電圧を可変できることを確認します。
 0.1V→0.5V→1V→2V→2.5V→最大(右に回し切り)と電圧計の読みが変化することを観測します。
  

■測定結果
・ゆっくり右に回すと、電圧が徐々に大きくなり、約3V(3.03V)まで可変できることが分かりました。

0.1V

0.5V

1V

2V

2.5V

約3V(右に回し切り)

今回は可変電圧電源に負荷をつながないオープン状態で観測しました。今回のような簡易的な電源の場合、その電源電圧は後段につながる負荷の影響を強く受けます。
(電圧が負荷によって変化します)
負荷による変動を小さくしたい場合は、オペアンプをバッファとして入れたり、レギュレータを入れたりして、電圧を安定化させることが一般的です。

今回の実験部材

■半固定抵抗器



※写真は実験に使用した半固定抵抗器と同タイプの100Ω品です

半固定抵抗器はトリマーとも呼ばれます。ドライバーなどを使って軸を回転させることで抵抗値を変化させる構造です。一度調整をすれば固定して使用することを前提としていて、機器の初期設定などに使われます。
一方、抵抗値を変化させる部品としては可変抵抗器(ボリューム)も広く使われています。
可変抵抗器は頻繁に摺動させる前提で設計されており、オーディオアンプの音量調整用途などに使われています。
半固定抵抗も可変抵抗器も摺動させて抵抗値を変化させるという目的から構造は類似していますが、求められる仕様(例えば、耐久性能など)が異なるため、接点構造や材料などに違いがあります。

今回の実験

「E-Stationを使ってLEDを光らせる」で電流計を使って電流を計測しました。
今回は同じ回路を使い、電流計を使わずに電圧計を使って計算で電流を求めます。

※なぜわざわざ計算で求めるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし電子回路の検証では、電圧を測定し電流を求めるのが一般的です。
 理由はのちほど。

■実験手順
1.図のようにブレッドボード上に回路をつくります。


2.電源を投入し、全体の電圧V1とLED端の電圧V2を測定します。
3.抵抗Rの両端にかかる電圧をV1-V2で求めます。
4.オームの法則“I=V/R”より電流値を求めます。

■測定結果
・以下のような測定結果となりました。

  ~モニターを拡大~

・測定の結果、V1=5.07V、V2=1.89Vでした。
・したがって、抵抗両端の電圧は以下となります。

   5.07V-1.89V=3.18V

・電流値は“I=V/R”より
   I=3.18V/1kΩ=3.18mA
この実験を通してオームの法則に従って電圧を測定し電流を求めることができることがわかりました。

※「E-StationでLEDを光らせる」の回で、電流計による測定値は3.15mAでした。
 今回の値との誤差は約1%であり同等の測定ができていることがわかりました。
※抵抗とLEDを逆に接続し、抵抗をGND(グランド)側に接続し抵抗端の電圧を測定すれば、
 そのまま抵抗値で割り算することで電流を求められます。
 今回は非線形素子(電流と電圧が直線的に変化しない)のLEDがGND側でしたので、
 上記の計算を行いました。

<補足>なぜ電圧計を使って計算で電流を求める方法が一般的?
大きくは2つの理由が考えられます。
1.電流計は回路に直列で挿入することが必要です。したがって完成した電子回路の観測を行う場合、
 電流計を挿入するために、プリント基板などのパターンを切ったり部品を外したりすることが
 必要な場合が多いためです。
2.電流計には内部に小さいですが抵抗分があり、その抵抗分が回路の振る舞いに影響を与える可能性
 があるためです。
 また、特に高周波やデジタル回路では波形への影響が考えられ大きな影響がでる可能性があるためです。
 (電圧計は大きな内部抵抗を回路に並列に接続するため、電流計に比べて影響は小さい)
  
  

今回の実験部材

■カーボン抵抗

今回の実験にはカーボン抵抗を使いました。正式には炭素被膜抵抗と言います。
比較的誤差が大きく(5%程度)また雑音が大きいですが、安価であることから広く使われています。
抵抗としては、他に誤差の小さい金属皮膜抵抗、放熱性があり数~数十W程度に対応できるセメント抵抗などが使われています。

今回の実験

■実験手順
①回路の作成
以下の回路をブレッドボード上につくります。(電圧計V1と乾電池を直列に配線する)

②実験
E-Stationの電源を投入し電圧を測定します。

今回は新品のアルカリ乾電池を使用し、電圧計V1の測定値は1.60Vでした。
アルカリ乾電池の公称電圧は1.5Vですが、新品時の解放電圧(OCV *1)は1.6V程度が一般的です。
そのため正常に測定できていることがわかります。
  *1:JISではアルカリ乾電池のOCVは1.68Vmax
この実験を通して電圧計の使い方を学ぶことができました。


今回の実験部材

■乾電池
※写真は今回の実験に使用した電池

乾電池は電解液を固体にしみ込ませて担持させ、扱いやすくした一次電池です。
(一回限りの使用のものが一次電池、充電して繰り返し使えるものが二次電池)
いくつかの形状・電圧などが規格化されていて、高い互換性があります。
また、身近にある一次乾電池では、マンガン電池とアルカリ電池の2種類があります。
電極の材料はそれぞれ+極に二酸化マンガン、-極に亜鉛を使っていることは共通ですが、電解液などに違いがあります。
アルカリ乾電池はマンガン電池よりもパワーがあり長持ちです。大きな電流を必要とする機器に向いています。

今回は乾電池(=一次電池)を取り上げていますが、二次電池を含めた広義の電池ではリチウムイオン電池が話題になることが多いですね。
リチウムイオン電池は高いエネルギー密度、長寿命、軽量といった特性を持ち、PCやスマートホン、電気自動車などには不可欠なものとなっています。
今後はさらに高エネルギー密度、安全性、急速充電性などが求められ、全固体電池の開発が進められています。 電池の進化への期待は高いですね。

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