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今回の実験室

今回は、これまでに作製したアクティブフィルタを利用し、低インピーダンスを駆動する回路(簡易的なパワーアンプ)を追加して、実際にスピーカから音を出します。
さらにフィルタの定数を可変することで波形と音の違いを比較します。

■実験方法

1.以下の回路図をブレッドボード上に作製します。

図1:アクティブフィルタとスピーカを使った実験回路

回路は、前回までに作製したアクティブフィルタ(LPF)の後段に、エミッタフォロワ回路とスピーカを接続した構成です。
一般的にスピーカは8Ωや4Ωといった低いインピーダンスであるため、オペアンプで直接駆動するのは難しくなります。
そこで、電流駆動能力を補うためにエミッタフォロワ回路を追加しています。
なお、外部のオーディオアンプを接続しても問題ありません。
入力信号には、これまではE-Stationの正弦波信号を使用していましたが、今回はパソコンやCDプレーヤなどのヘッドホン出力を利用します。

2.E-Stationの電源をONにし、半固定抵抗を回し適度な音量になるように調整します。
このときの波形と試聴した音の傾向を記録します。

3.アクティブフィルタの定数を変更し、その際の波形と音の変化を確認します。
今回は以下の観点で比較を行いました。
・LPFのカットオフ周波数の違いによる変化
・LPFとHPFの違いによる変化
これらを確認するため、以下の3つの条件で実験を行います。

表1:実験用フィルタ構成部品の定数とfc・Q
図2:実験用フィルタのゲイン周波数特性

■実験結果

1.以下のようにブレッドボード上に回路をつくりました。

図3:E-Stationへの実装例

2.半固定抵抗を最小(ゼロ)の位置にし、E-Stationの電源をONにして音源を再生しました。
 (今回はパソコンを使用) 
その後、半固定抵抗を徐々に回し、適度の音量に調整しました。

その結果、以下のような波形が観測されました。
なお、音楽信号は変化が大きいため厳密な比較は難しいです。今回は比較的広い音域が含まれる区間を記録しています。
(ストレージ機能付きオシロスコープであれば、より詳細な比較が可能です) 

図4:①LPFでの音楽の波形例

3-1.LPFのカットオフ周波数fcを1073Hzから325Hzに変化させ、波形と音を比較しました。 
325Hzに変化させると、波形の振幅自体には大きな変化は見られませんが、細かい高周波成分が除去されるため、全体的に滑らかな波形になりました。
試聴結果としては、音量がやや小さくなり、こもったような音に変化しました。

図5:LPFのカットオフ周波数を変化させた場合の波形例


3-2.LPFから同じカットオフ周波数のHPFに変更し、波形と音を比較しました。
HPFに変更すると、低周波成分が除去されるため、大きくゆっくりする波形が減少し、高周波成分のみが強調された波形となりました。
試聴結果では、波形から受ける印象ほどの音量の大きな変化は感じられませんが、高音が強調されたシャリシャリした音に変化しました。

図6:LPFとHPFの波形例

■考察

今回の実験では、アクティブフィルタのカットオフ周波数やフィルタの種類(LPF/HPF)を変更することで、音に変化を与えられることを確認しました。
また、低周波成分をカットした場合、時間波形の振幅が小さく見える傾向がありました。これは音楽信号において低周波(低音)成分が比較的大きなエネルギーを持っているためと考えられます。
一方で、低周波成分をカットしても、波形の見た目ほど音量の低下を感じませんでした。この理由として、以下の点が考えられます。
 ・使用したスピーカの低音再生能力が十分でなかったこと
  (カット前の状態でも低音成分が十分再生されていなかった可能性がある) 
 ・人間の聴覚は周波数によって感度が異なること
  (HPFでは感度の高い中高音域、特に4kHz付近が相対的に強調されるため、音量があまり小さく感じられない) 
これらの結果から、評価の観点によって見るべき指標が異なることが分かります。
例えば、回路がクリップしていないかといった電気的な動作確認には時間波形の観測が重要です。 一方で音の特性やフィルタの効果を評価するには周波数特性の確認が有効です。
このように、回路や信号を正しく理解するには、時間軸と周波数軸の両方から総合的に評価することが重要であると言えます。

今回の実験室

今回は、前回作製したオペアンプを用いたLPF(Low Pass Filter)の回路定数を変更し、周波数特性がどのように変化するかを確認します。
特に、カットオフ周波数fcが同じ場合でも、共振の鋭さを示すQ値によって特性がどのように変わるかを理解することを目的とします。この違いを理解することで、用途に応じたフィルタ設計の考え方を身につけることができます。

■実験方法

1.前回ブレッドボード上に作製したLPF回路を使用します。
本回路におけるカットオフ周波数fcと共振の鋭さQは以下の式で表されます。
今回は、①~③のように部品定数を変更しながら、Q値が異なる複数の条件で測定を行います。

図1:LPFの回路
カットオフ周波数、Qの計算式
表1:フィルタ構成部品の定数とfc・Q

2.測定する周波数範囲(例:数十Hz~数十kHz)と測定点を決め、各周波数で電圧を測定します。
周波数は対数的に間隔をとると特性が把握しやすくなります。ただし、カットオフ周波数付近は特性の変化が大きいので、その周波数付近の測定間隔を小さめにするとより特性が把握しやすくなります。

※Q値が0.7以上になる場合、カットオフ周波数付近ではゲインが0dB以上(入力電圧より出力電圧が大きくなる)になります。 これにより、オペアンプの動作電圧範囲を超えると波形がクリップします。
波形がクリップすると正しい測定ができませんので、半固定抵抗VRで入力電圧を調整します。
一方で、入力電圧を小さくしすぎると、測定の精度に影響するダイナミックレンジが小さくなりますので、出力波形がクリップしない程度で適度な大きさに設定します。

3.測定結果をもとにゲインの周波数特性を作成し、その傾向を考察します。

■実験結果

1.以下のようにブレッドボード上に回路を作製しました。

図2:E-Stationへの実装例

2.各周波数において入力電圧 V1 と出力電圧 V2 を測定し、記録します(V1:入力、V2:出力)。   

3.測定結果をもとに、ゲイン(V2/V1)を算出し、周波数特性としてグラフ化しました。

図3:図1のLPFにおいて①②③の部品定数の場合のゲイン周波数特性の比較

■考察

今回の結果より、カットオフ周波数が同じでも、Q値によってフィルタ特性が大きく変化することが確認できました。
Q値を大きくするとカットオフ周波数付近でゲインが増加し、それより高い周波数は急峻に減衰します。この特性をHPFに利用すると、例えばオーディオ回路において必要な低音帯域を強調しつつ、それより低い不要な成分を抑制するような音の調整が可能になります。
一方で、Q値を大きくしすぎると、過渡応答においてオーバーシュートが発生しやすくなり、歪みの原因となる場合があります。(補足参照) また、極端にQ値が高い場合は発振のリスクも高まります。
そのため、Q値は目的に応じて適切に設定する必要があり、高いQ値を扱う場合は部品のばらつきや温度特性(温特)の影響が少ない高精度部品を選定することが重要です。
そのほかに、バタワース、ベッセル、チェビシェフなど、通過域と減衰特性に特徴を持つフィルタ特性があります。興味がある方は、Webなどで多数紹介されていますので、ぜひ確認してみてください。

図4:Q値の違いによる過渡応答波形の変化

■今回の実験部材

フィルムコンデンサ
絶縁体にポリエステルやポリプロピレンなどの薄膜を使用したコンデンサで、低損失かつ高い安定性を特長とします。
構造上、チップ化(表面実装化)が難しいため、MLCCや電解コンデンサに比べて使用機会は減少していますが、特性の安定性が求められる用途では現在でも重要な役割を担っています。
特に、オーディオ回路やフィルタ回路、タイミング回路など、周波数特性や波形品質が重要な用途で多く利用されています。本実験のように、Q値による周波数特性の違いを評価する場合には、損失が少なく安定した特性を持つフィルムコンデンサが適しています。

フィルムコンデンサの写真

今回の実験室

今回は、前回のCR回路を発展させ、E-Stationでオペアンプを用いたLPF(Low Pass Filter)とHPF(High Pass Filter)を作製し、周波数特性を測定します。
前回扱ったような抵抗やコンデンサのみで構成されるフィルタは「パッシブフィルタ」と呼ばれます。一方、本記事で扱うようにオペアンプなどの能動素子を使用したものは「アクティブフィルタ」と呼ばれます。 アクティブフィルタは多くの電子機器で使用される基本回路です。本実験を通じて、その動作と特徴を理解していきましょう。

■実験方法

1.以下の回路図1、回路図2のように、ブレッドボード上にLPFとHPFをそれぞれ作製します。
前回同様に、フィルタの入力端子にオシロスコープのCH1、出力端子にCH2を接続します。
   ※CH1はフィルタへの入力信号、CH2は出力信号の観測に使用します。

図1」LPFの回路
図2:HPFの回路

<今回の回路の補足説明>
今回は5Vの単電源で正弦波信号を扱います。このとき、グランドを信号の基準電位にすると、オペアンプは負方向の振幅を正しく扱えません。
そこで、中点電位(今回は2.5V)を生成し、この電位を基準として信号を扱うようにしています。
また、正弦波入力端子に半固定抵抗VRを追加しています。アクティブフィルタは回路定数によってはゲインが0dB以上となり、出力が入力より大きくなる場合があります。
今回の条件では、波高値が2.5Vを超えると信号がクリップします。そのため、半固定抵抗により入力信号レベルを調整できるようにしています。

2.測定周波数範囲と測定周波数を決め、測定します。
今回の回路におけるカットオフ周波数は以下の式で求められます。

カットオフ周波数の計算式

測定周波数範囲と測定周波数のポイントは前回と同様にします。

3.測定結果をもとに周波数特性を作成します。
各測定周波数において、ゲイン(Gain)を計算します。ゲインは一般的にdB(デシベル)表示することが一般的ですので、以下のように計算します。

Gainの計算式

この結果の表をもとにグラフを作成します。

■実験結果

1.以下のようにブレッドボード上に回路を構築しました。

図2:E-Stationへの実装例

2.各周波数において、入力電圧V1と出力電圧V2を測定・記録しました。
 測定結果は以下のようになりました。

表1:図1のLPFの測定結果
表2:図2のHPFの測定結果

3.その結果をもとに、ゲインの周波数特性をグラフとして作成しました。
回路図2(HPF)の200Hz以下の周波数では、測定電圧が低くなり正確な電圧が計測できませんでした。
そのため今回の測定では200Hz以下は有効なデータではないと判断しました。

図4:図1のLPFのゲイン周波数特性
図5:図2のHPFのゲイン周波数特性

■考察

今回のグラフから、LPFではカットオフ周波数以上の領域で、ゲインが約12dB/octの傾きで減衰することが確認できました。
  ※oct(オクターブ):ある周波数に対して2倍(または半分)の周波数の幅
一方、HPFではカットオフ周波数以下の領域で、LPFと同様に12dB/octの傾きで減衰しています。

前回のCR回路と今回のアクティブフィルタによるLPFを比較すると、CR回路は6dB/octであり、今回のフィルタの半分の傾きであることが分かります。

図6:図1のLPF(アクティブ)と前回のLPF(パッシブ)のGain周波数特性の比較

この6dB/octのフィルタは「一次フィルタ」、12dB/octのフィルタは「二次フィルタ」と呼ばれます。
一次フィルタではカットオフ周波数付近の特性は変えられません。 二次フィルタでは共振が生じますので、回路定数を調整することで共振の鋭さ(Q)を制御し、カットオフ周波数付近の特性を変化できます。

今回の実験を通じて、アクティブフィルタの基本特性と、一次フィルタとの違いを確認することができました。
次回は、さらにアクティブフィルタを深堀りします。

■今回の実験部材

電解コンデンサ
電解コンデンサの中でも、最も広く使用されているのはアルミ電解コンデンサで、「ケミコン」とも呼ばれます。
電解コンデンサは大きな静電容量を実現できることが特徴で、電源の平滑やデカップリング用途に多く使用されます。
今回の回路では、電源および中点電位のデカップリング用途として使用しています。
ただし、容量を大きくすると高周波特性が劣化するという特性があります(高周波ではインダクタンス成分が支配的になります)。  そのため、実際の回路では、高周波特性に優れたセラミックコンデンサを並列に接続して使用するのが一般的です。

電解コンデンサの写真

今回の実験室

以前の「E-StationでCR回路を作る」の記事では、CR回路を遅延回路機能として観測しました。
今回はCR回路をフィルタ回路として動作させ、E-Stationに内蔵された発振器と測定機能を活用し、ゲイン(Gain:利得)の周波数特性を測定します。
フィルタ回路は電子回路設計で頻繁に使われるため、「周波数によって信号がどのように変化するか」を理解することが重要です。
次回以降、今回の周波数特性測定を使い、アクティブフィルタや各種フィルタの測定と音の加工の実験へ発展させます。

■実験方法

1.以下の回路図のように、CR回路に正弦波を入力します。
入力端子にオシロスコープのCH1を、出力端子にCH2を接続します。

図1:LPFの回路

ゲインは入力電圧と出力電圧の比から求めるため、オシロスコープでそれぞれの電圧振幅を測定します。
周波数特性の算出自体は電圧値を用いて行いますが、波形を同時に観測することで、波形の歪みやクリップなどの異常を確認でき、測定の信頼性を高めることができます。

2.測定周波数範囲と測定周波数を決め測定します。
今回のCR回路のカットオフ周波数は以下で求められます。

fc=1/(2*PI*C1*R1)

今回は1kHzを含む20Hz~20kHzを測定範囲とします。
これは人間の可聴帯域に対応しており、オーディオ回路の評価で一般的に用いられる範囲です。
また、横軸の周波数は対数スケールで表現することが多いため、測定周波数も対数的に等間隔になるように測定周波数を設定します。特にカットオフ周波数付近ではゲインが大きく変化するため、測定点を細かく設定すると特性をより正確に把握できます。

3.測定結果をもとに周波数特性を作成します。
各測定周波数ごとに、以下の式でゲインを求めます。

Gain[dB]=20log(出力電圧/入力電圧)

ここでdB(デシベル)は比を対数で表現した単位で、幅広い変化を扱いやすくするために用いられます。

■実験結果

1.以下のようにE-Stationのブレッドボード上に回路を実装しました。

図2:E-Stationへの実装例

2.各周波数毎にV1とV2のそれぞれの電圧を記録していきます。
測定結果は以下のようになりました。

図3:周波数別の測定波形

表1:図1の測定結果

3.ゲインの周波数特性を表示します。
1kHz付近を境に、低い周波数ではゲインが0dB一定、高い周波数ではゲインが減衰しており、低域通過フィルタLPF(Low Pass Filter)であることが確認できました。

図4:図1の回路のゲイン周波数特性

■考察

今回は周波数特性の理解を目的として、各周波数ごとに入力電圧と出力電圧を測定し、ゲインを算出しました。
この方法は原理を理解するのに適していますが、測定点が多くなると作業量が増えるという課題があります。
実際の開発現場では、より効率的な測定手法が用いられます。
代表的な測定方法には以下があります。

1.掃引(スイープ)法
  正弦波の周波数を連続的に変化させながら応答を測定する方法です。
  今回の実験は、この手法を手動で行ったものに相当します。
2.インパルス応答法
  非常に短いパルスを入力し、出力応答の時間波形をフーリエ変換することで周波数特性を求めます。
3.ノイズ測定法(ランダム信号法)
  ホワイトノイズを入力し、出力のスペクトル解析する方法です。

他にもチャープ信号(短時間の連続的に変化する信号を入力する)を使った測定など、複数の方法があります。
測定対象の特性(非線形性や時間変動)や測定環境に応じて、これらの手法を使い分けることが重要です。

■今回の実験部材

セラミックコンデンサ
今回はセラミックコンデンサです。セラミック(陶磁器)を誘電体に用い、小型・低コストで量産性に優れるため、電子機器のあらゆる分野で広く使われています。特に高周波特性に優れ、電源ラインのノイズ除去(デカップリング用途)に最適です。代表的なものに積層セラミックコンデンサ(MLCC)があり、高容量化と小型化が進んだことで近年ますます使用機会が増えています。一方で温度や印加電圧による容量変化があるため、用途に応じた特性選定が重要です。

セラミックコンデンサの写真

今回の実験室

今回は前回、前々回に引き続き、CMOSイメージセンサ実験の第3回です。
前回は原理モデルを用いた実験を行い、被写体画像を想定できる程度の画像は得られましたが、十分に鮮明な画像とは言えない結果でした。
そこで今回は、画像品質の改善を目的とした実験を行いました。

改善実験

1.要因の考察

十分な画像を得られない原因として、いくつかの要因が考えられます。 大きく分けると、電気的要因と光学的要因です。
まず電気的要因について検討してみます。
今回使用したフォトICダイオードの特性は、「E-StationでCMOSイメージセンサの原理を学ぶ①」の図5に示しています。 


図5よると、飽和領域より低い光電流の領域(活性領域)では入射光の明るさに応じた光電流が得られることが分かります。 今回の測定結果では、光電流は0.1mA以下であり負荷線から見ても飽和領域ではないことが確認できました。
そのため、電気的な問題よりも光学的に明るさを改善することで画質の向上が期待できると考えました。

まず、光学レンズの明るさについて考えます。
レンズの明るさは一般に、焦点距離と有効口径の比であるF値で表され、F値が小さいほど明るいレンズとなります。今回実験に使用したレンズのF値は約2.3であり、特別に暗いレンズではないと判断しました。 
一方、レンズ性能にはF値のほかに、光の透過性を示すT値があります。 今回は数百円で入手可能な実験用のプラスチックレンズを使用しており、T値が公開されておりません。 ガラスレンズと比較すると透過率は高くない可能性があります。
今回はレンズの性能の影響も想定しつつ、別の要素による改善を試みることにしました。
想定した要因は以下の通りです。
 ・光源の問題(全体を均一に照射できていないことと、光量不足)
 ・センサボックスへ不要光の侵入により、全体の明るさは増すもののコントラストが低下している
  (1面はオープンにしていた)
 ・センサボックス内部での光の反射によるコントラスト低下

2.光源の改善

「E-StationでCMOSイメージセンサを学ぶ②」の図8(グレースケール表示)を見ると、上下で明るさに差があることが分かります。 

前回は光源を暗箱の下側だけに設置していました。 そこで暗箱の天面にLED照明を追加し、上下に照射する構成としました。
その結果を図1に示します。

上下のバランスは少し改善しているように思われますが、まだ十分な画質とは言えない結果でした。
特にコントラストの改善は見られませんでした。

3.センサボックスの遮光

次に、レンズ以外から不要な光が侵入することで、画像のコントラストが悪化している可能性を想定しました。 そこでレンズ以外から光が侵入しないよう、センサボックスの遮光を行います。
「2.光源の改善」に加え、センサボックスに蓋を取り付け、ボックス全体をクローズすることで不要光を遮断しました。

その結果を図2に示します。
コントラストは改善したようですが、さらに改善を試みます。

4.センサボックス内部の反射対策

今回のセンサボックスは紙製であり、レンズを通過した光がセンサボックス内部で反射している可能性があります。
内部反射が大きいと、白黒のコントラストが低下する要因となります。
そのため図3のように「3.センサボックスへの遮光」に加え、センサボックス内部の壁に黒色の不織布を貼り付け、内部反射を抑制しました。

その結果、図4に示す画像が得られました。

さらに画像が改善し、「イ」と判読できるレベルの画像を確認できました。

<補足>
今回の改善実験以外にも、以下のような改善案も考えられそうです。
・各フォトICダイオードへの光の入射角度と距離を揃える(もしくは補正する)
 今回は像距離120mmに対してセンサは約60mm角の範囲に設置されています。
 本来は垂直かつ同距離で入光するのが理想ですが、上記では角度で最大約20°程度、
 距離で3%程度の差が考えられますので、その差を考慮する案です。
 
・フォトICダイオードの実装密度を高める
 ユニバーサル基板では限界があり、プリント基板を作成することでさらに高密度に
 実装し、分解能を高める案です。

5.実験のまとめ

今回は市販されている材料のみを使用して、CMOSイメージセンサの原理を実験的に確認することができました。
この実験をさらに高密度に実装し、カラー化(RGBなどへの分離)および動的な電気信号の読み出しを行うことで、CMOSイメージセンサの基本的な動作が実現できると考えられます。
実際の製品では、これらの基本原理に加え、さまざまなノウハウや高度な技術が組み合わさることで実現されていると思われます。
また、スマートフォン向けの小型イメージセンサや、自動車用途など過酷な環境下での使用など、CMOSイメージセンサは幅広い用途で活用されています。本実験を通じて、原理だけでは語りつくせない技術の蓄積があることを改めて感じる結果となりました。

今回の実験室

今回は前回に続き、CMOSイメージセンサ実験の第2回です。前回は実験の設計を行いましたので、今回は実際に製作し動作させてみます。

実験の方法

1.センサ基板の製作

はじめに各素子をはんだ付けする前にセンサボックスに収まるサイズにユニバーサル基板をカットします。 
次に、ユニバーサル基板上に図1の回路図に従い、8行x8列になるようにフォトICダイオードと抵抗のはんだ付けを行いました。


センサ基板はセンサボックス内に配置されるため基板上で電圧を測定することが困難です。そこで各測定端をリード線で引き出し、サブ基板に測定端子をA1~H8のように格子状の順番で並べた測定端子としてはんだ付けを行いました。
測定線は64本となるため、今回は複数の線を束ねたフラットケーブルを使用しています。
このようにして図2のようなセンサ基板が完成しました。


2.センサボックスの製作

センサボックスには加工が容易な15cm角の紙製箱を使用しました。 箱の1面の中央に穴を開けて光学レンズを取り付け、さらにレンズと並行になるよう、かつ光学レンズとセンサとの距離が像距離(今回は120mm)となる位置にセンサ基板を固定しました。
この結果、図3のようなセンサボックスが完成しました。


3.評価環境の製作

不要な外光をなるべく避けるため、図4のように大型の段ボール箱の内側に黒シートを貼り付けた簡易的な暗箱を準備しました。

図5のように暗箱の中にセンサボックス、被写体画像、光源を設置します。
被写体画像は、上下左右が対象でない方が実験には適していると考え、今回は「イ」の文字を使用しました。
(1926年に高柳健次郎氏が世界で初めて映像の電子表示に成功した際の文字も「イ」であったことから、そのリスペクトも込めています)


4.測定

いよいよ評価開始です!
まず、光学レンズから被写体までの距離を被写体距離u(今回は600mm)になるように設置します。
フォトICダイオード面には画像が映りませんので結像しているかが分かりません、そこで図6のようにまずはフォトICダイオード面に白い紙を貼り結像するように位置を微調整します。結像したら、白い紙を取り除きます。


次に、E-Stationの5V電源およびGND端子とセンサ基板に接続し、電源供給を行います。その後、E-Stationの電圧計端子でそれぞれの素子端の電圧を計測します。
本実験では、8×8=64個すべてのデータの取得が必要となるため、測定端子に付与したA1~H8までの番号に従い、順番に電圧を測定しています。
その結果、表1の結果が得られました。


5.画像の表示

測定した電圧データをMicrosoft Excelに入力し、以下の式に従って電流値に変換します。

 電流値=(電源電圧Vcc―測定電圧)/抵抗値

Excelでは256階調のカラースケール設定が可能なため、今回は電流値の最小値を黒、最大値を白に割り当てたグレースケール表示を行いました。 その結果、図7のような画像を作成することができました。

一見すると「反転したイ」に見えますね。 反転していると視覚的に評価しにくいので、Excel上でさらに反転処理を行います。
※補足
凸レンズ1枚で像を結像させているため、光学的には像は反転するのが正しい挙動です。 今回は電気信号として画像情報を取得しているため、このような反転処理も容易に行えます。

それでも、まだ「なんとなく“イ”に見える」レベルです。
次回はさらに画像品質の改善にチャレンジしていきたいと思います。

今回の実験室

スマートフォン、車載カメラなどいろいろな用途に使われているCMOSイメージセンサの原理を、実験を通じて学びたいと思います。 今回はその1回目です。

実験方法と実験サンプルの設計

1.CMOSイメージセンサの原理について

実験に入る前にCMOSイメージセンサの原理を学びたいと思います。
CMOSイメージセンサを拡大すると図1のように素子が格子状に並んだ構造をしています。
各素子の断面は図2のようになっており、センサに入った光はレンズとカラーフィルタを通過したあと、フォトダイオードで光の強弱に応じた電荷量に変換され、その変化を電気信号として取り出します。

図1:CMOSイメージセンサ図
図2:断面図

2.今回の実験方法のコンセプト設計

CMOSイメージセンサは半導体チップ上に形成する素子ですので、そのままの構造を再現する実験は困難です。
今回は誰でも手に入るディスクリートのフォトダイオード部品を使って、実際に電気信号を取り出し、画像として表現することで原理を学ぶことをコンセプトに進めます。
そこで図3のような案を考えました。
 ・イメージセンサと同様の原理で働くフォトダイオードを格子状に並べ、そこから
  電気信号を取り出します
 ・今回は簡単な白黒画像を対象とします
 ・E-Stationを使用し、それぞれのフォトダイオードに電源を供給し、それぞれの
  フォトダイオード端の電圧を測定し光電流を求めます。
  その光電流値をもとにMicrosoft Excelを活用し256階層の白黒画像としてプロット
  してみます。
 ・実際に画像として認識できるか? 解像度を上げるにはどうしたらよいか?
  などを、実験を通じて学びたいと思います。

図3:実験コンセプト図

3.実験ツールの詳細設計

センサ部分・電気部分・光学部分に分けて考えます。

●センサ設計

今回は補正フィルタなしで視感度に近い特性を持ち、入手が容易なフォトICダイオード(浜松 S13948-01SB)を採用しました。 次にこのフォトICダイオードを使った素子数の設計ですが、当然素子数を増やせば解像度が上がります。 今回は素子をユニバーサル基板上にはんだ付けすることを前提にするため、高密度化には一定の制約が生じます。 そのため、現実的な実装密度と後述の光学設計要件から図4のように8×8=64個に決めました。

図4:ユニバーサル基板とフォトICダイオード

●電気設計

フォトICダイオードの特性は図5のように適切な負荷抵抗を通じて電圧を印可しておくと、明るさに応じて光電流が流れることが分かります。
今回は一般的なオフィスの環境のもと、光源となるLEDライトを使って行います。 そのため、オフィスの明るさから精密作業台レベルの明るさ程度の光が入力される可能性があると考えました。
E-Stationは5V電源を内蔵していますので、図6のように1kΩの抵抗を通じてフォトICダイオードに供給するようにします。
その場合の負荷線が図5の紫線となります。この場合、精密作業台レベルの明るさ以下はほぼリニアな光電流変化を検出することが期待できます。

図5:フォトICダイオード特性
図6:回路図

(E-Stationの電源供給についても検証しました。 精密作業台レベルの明るい環境でフォトICダイオードに流れる電流は3.3mA程度です。 64個すべてを明るい環境下に置かれた場合でも3.3mAx64=211mAです。 E-Stationの5V電源の供給能力は1Aですので十分ドライブできます。)

ユニバーサル基板上にフォトICダイオードを64個並べると図7のようにおおよそ□60mmになりました。

図7:レイアウト図

●光学設計

実験しやすい大きさとしてA4サイズ程度の画像を上記64個の格子状のフォトICダイオードに画像を映すことを考えます。
レンズの焦点距離fとそれぞれ像距離vと被写体距離uの関係は以下の式で表すことができます。

1/f=1/u+1/v

今回はケニス社のプラスチックレンズD-43 焦点距離100mmを選択しました。
この結果、上記の式により被写体距離は600mm程度必要となります。
像距離と被写体距離の比は5倍になりますので、250mmの画像は概ね1/5の50mm程度になることが予想されます。今回のセンサ面のサイズの□60mmに適度に収まるため、この設計内容で進めることにします。

図8:光学設計図

4.予備実験

これまでの検討で実験に関わる設計ができましたが、数個の部品を使ってその実現性を予備実験で確かめたいと思います。
今回は2つの観点で予備実験を行いました。

・レンズを通した白黒の光の差をフォトICダイオードが必要な精度で検出できることの確認

図9のようにレンズを通した白黒画像の白(明るい)と黒(暗い)が映るように準備します。
 その後、ひとつのフォトICダイオードを白と黒それぞれの位置になるように動かしながら
 光電流を測定し、以下の結果を得ました。
  白位置のとき  光電流Id=0.18mA
  黒位置のとき  光電流Id=0.12mA
 これにより約33%の電流変化が得られることが確認できましたので、今回の実験方法で
 明暗を判別できると判断しました。

・フォトICダイオードの個体ばらつきが図形を描く目的に使えることの確認

今回の実験では64個のフォトICダイオードを使用します。 個々の素子のばらつきが大きい場合、正しい画像が得られないことが想定されます。 そこで素子の光電流のばらつきを確認します。
データシート上の光電流の特性は以下でした。
  光電流:Min 0.18mA 、 Max 0.34mA
データシート上のMin値とMax値の差は、上記予備実験の白黒画像の電流差よりも大きく、これでは今回実験の画像用途では使用が難しいことになります。
しかし、データシートは一般的におおきなマージンを見ていますので、実際に5個を同じ条件で測定し、現実的なばらつきを基に判断したいと思います。
測定の結果、標準偏差σ=0.01mA程度で、99.7%区間である3σは0.03mA程度でした。
予備実験での白黒の電流差は0.06mAであることを考えると決して精度が高いとは言えません。
しかし、256階層グレースケール程度の画像を描くには、それほど高い精度は必要ありませんので、使用可能と判断して進めます。

次回はこれらの設計を実際に製作し動作させてみます。

今回の実験

今回は光を検出するCdSフォトセルを2個使用し、2か所の光の強度の差を検出します。

■実験方法
1.以下の回路図をつくります。

回路図
2.CdSフォトセルAとBにそれぞれの光の強さを変えたときに、LED1と2がどのように光るかを観察します。

■実験結果
1.以下のようにブレッドボード上に回路をつくりました。
ブレッドボード上につくった写真

2.それぞれのCdSフォトセルを指で光を遮るようにします。
 まずはCdSフォトセルAの受光部に光があたらないように指で表面を覆いました。
 LED1は消灯し、LED2が点灯しました。
ブレッドボード上につくった写真
 次にCdSフォトセルBの受光部に光があたらないように指で表面を覆いました。
 LED1が点灯し、LED2は消灯しました。
ブレッドボード上につくった写真

<考察>
LEDの点灯と消灯の観察とともにオペアンプの出力電圧の変化から回路動作を考察しました。
今回のオペアンプはフィードバック回路ではありませんので、コンパレータと同様の動作と考えられます。
つまり、オペアンプ入力端IN-とIN+の電圧の比較となり、IN-の電圧が大きければ出力はグランド、入力端IN+の電圧が大きければ出力は電源電位になります。
CdSフォトセルAの光を遮った場合、オペアンプの出力は0.04V(≒グランド電位)でした。
CdSフォトセルBの光を遮った場合、オペアンプの出力は5.06V(≒電源電位)でした。
それぞれのオペアンプ入力端の電圧は、抵抗33kΩとCdSフォトセルの分圧回路ですので、CdSフォトセルの光を遮った場合、素子の抵抗が大きくなっていると考えられます。

LEDの動作については、以前の実験で記述していますね。
オペアンプの出力電位が低いとトランジスタのベース電位は低くオンしないのでLED2側の電流のみが流れます。
反対に出力電位が高いとLED2側には電流が流れないが、トランジスタはオンするためLED1側のみに電流が流れます。

今回の部材

CdSフォトセル MI527
CdSフォトセル写真
CdS(硫化カドミウム)フォトセルは、当たる光の強さに応じて抵抗値が変化するCdSの性質を利用しています。
今回使用したMI527のデータシートによると、受光部に光が当たった場合の抵抗値は10k~20kΩでした。(10ルクスの場合を明抵抗として記載されています)
受光部の光を遮った場合の抵抗値は1MΩでした。(10ルクスの光を消してから10秒後の値を暗抵抗として記載されています)
カドミウムを含むCdSフォトセルは欧州RoHS指令などの規制対象になります。
代替技術の進化にともない例外規定は縮小され、シリコンフォトダイオードやフォトICなどへの代替が進んでいます。

今回の実験室

マイクロホンは音を電気信号に変換するデバイスです。
今回は音の違いを電気信号の違いとしてオシロスコープで観測します。

■実験方法
1.回路図1のようにマイクロホンとオペアンプの増幅回路を接続した回路をつくります。

回路図1
2.電源を入れ、マイクロホンに向かって声を出し、オシロスコープの波形を観察します。
  「あ~」、「い~」、「う~」、「え~」、「お~」など異なる声を発音し、波形の違いを確認します。

■実験結果
1.回路図をブレッドボード上につくりました。
ブレッドボード写真

2.電源を入れ、マイクロホンに向かって「あ~」から「お~」まで発音したときの波形を観測しました。
「あ~」の波形
「い~」の波形
「う~」の波形
「え~」の波形
「お~」の波形
それぞれの波形を比較してみます。
いずれの波形も形は異なりますが、それぞれが繰り返しの波形になっています。
その繰り返し時間(波長)はほぼ同じくらいでした。
(=基本周波数はほぼ同じと考えられます)
それぞれの繰り返し波形の形は異なっています。
(=高調波成分が異なっていると考えられます)

■考察
回路図2のように、実験回路のオペアンプ出力にエミッタフォロワ回路とスピーカを接続し、収音した音をスピーカから出力してみました。

回路図2
収音した音が、オペアンプの電圧増幅とエミッタフォロワの電流増幅でスピーカを駆動し音が再生されていることが確認できました。
その後、マイクロホンにセンサーケーブルを接続し、スピーカに近づけてみました。
スピーカを追加した写真
マイクロホンとスピーカが接近すると、「ピー」という音が出力されその音の波形が正弦波に近いことが分かり、ハウリング現象が発生することも確認できました。
マイクとスピーカを近づけたときの写真(ハウリング)

※ハウリングについて
ハウリングは、スピーカから出た音をマイクロホンが拾い、アンプで増幅しスピーカから再度出力されることが繰り返されること(正帰還)で発生します。
ハウリングは不快な音が出力されるだけでなく、アンプにもスピーカにも負荷がかかりますので長時間続けることは避ける必要があります。
ハウリングの対策には、マイクとスピーカの位置や角度を変えるような音響的な対策と、イコライザやハウリングサプレッサのような電気的な処理での対策でハウリングを抑制する方法があります。

今回の部材

マイクロホン
マイクロホン写真
マイクロホンは、音声などの音を電気信号に変換する装置または部品です。
マイクロホンはいくつかの観点で分類されます。
ここでは変換原理や構造での分類と特性での分類を紹介します。
変換原理や構造で分類した場合、
 ・ダイナミック型
 ・ECM(エレクトレットコンデンサーマイク)型
 ・MEMS(微小電気機械システム)型
が使われます。
電子機器に組み込む場合、電源は必要としますが小型化が可能なECM型やMEMS型が使用されることが一般的です。
特性面もいくつかの分類方法がありますが、ここでは指向性に着目した分類を紹介します。
 ・無指向性(どの方向も同じ感度)
 ・単一指向性(前面の感度は高く、後方と側面は低い)
 ・双指向性(前面と後方は感度が高く、側面の感度が低い)
 ・狭指向性(特定の方向のみ感度が高い)
このようにマイクロホンはいろんな種類がありますので、用途に応じて選ぶことが重要です。

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