E-StationでCMOSイメージセンサの原理を学ぶ③(改善検討編)
今回の実験室
今回は前回、前々回に引き続き、CMOSイメージセンサ実験の第3回です。
前回は原理モデルを用いた実験を行い、被写体画像を想定できる程度の画像は得られましたが、十分に鮮明な画像とは言えない結果でした。
そこで今回は、画像品質の改善を目的とした実験を行いました。
改善実験
1.要因の考察
十分な画像を得られない原因として、いくつかの要因が考えられます。 大きく分けると、電気的要因と光学的要因です。
まず電気的要因について検討してみます。
今回使用したフォトICダイオードの特性は、「E-StationでCMOSイメージセンサの原理を学ぶ①」の図5に示しています。 
図5よると、飽和領域より低い光電流の領域(活性領域)では入射光の明るさに応じた光電流が得られることが分かります。 今回の測定結果では、光電流は0.1mA以下であり負荷線から見ても飽和領域ではないことが確認できました。
そのため、電気的な問題よりも光学的に明るさを改善することで画質の向上が期待できると考えました。
まず、光学レンズの明るさについて考えます。
レンズの明るさは一般に、焦点距離と有効口径の比であるF値で表され、F値が小さいほど明るいレンズとなります。今回実験に使用したレンズのF値は約2.3であり、特別に暗いレンズではないと判断しました。
一方、レンズ性能にはF値のほかに、光の透過性を示すT値があります。 今回は数百円で入手可能な実験用のプラスチックレンズを使用しており、T値が公開されておりません。 ガラスレンズと比較すると透過率は高くない可能性があります。
今回はレンズの性能の影響も想定しつつ、別の要素による改善を試みることにしました。
想定した要因は以下の通りです。
・光源の問題(全体を均一に照射できていないことと、光量不足)
・センサボックスへ不要光の侵入により、全体の明るさは増すもののコントラストが低下している
(1面はオープンにしていた)
・センサボックス内部での光の反射によるコントラスト低下
2.光源の改善
「E-StationでCMOSイメージセンサを学ぶ②」の図8(グレースケール表示)を見ると、上下で明るさに差があることが分かります。 
前回は光源を暗箱の下側だけに設置していました。 そこで暗箱の天面にLED照明を追加し、上下に照射する構成としました。
その結果を図1に示します。
上下のバランスは少し改善しているように思われますが、まだ十分な画質とは言えない結果でした。
特にコントラストの改善は見られませんでした。
3.センサボックスの遮光
次に、レンズ以外から不要な光が侵入することで、画像のコントラストが悪化している可能性を想定しました。 そこでレンズ以外から光が侵入しないよう、センサボックスの遮光を行います。
「2.光源の改善」に加え、センサボックスに蓋を取り付け、ボックス全体をクローズすることで不要光を遮断しました。
その結果を図2に示します。
コントラストは改善したようですが、さらに改善を試みます。
4.センサボックス内部の反射対策
今回のセンサボックスは紙製であり、レンズを通過した光がセンサボックス内部で反射している可能性があります。
内部反射が大きいと、白黒のコントラストが低下する要因となります。
そのため図3のように「3.センサボックスへの遮光」に加え、センサボックス内部の壁に黒色の不織布を貼り付け、内部反射を抑制しました。
その結果、図4に示す画像が得られました。
さらに画像が改善し、「イ」と判読できるレベルの画像を確認できました。
<補足>
今回の改善実験以外にも、以下のような改善案も考えられそうです。
・各フォトICダイオードへの光の入射角度と距離を揃える(もしくは補正する)
今回は像距離120mmに対してセンサは約60mm角の範囲に設置されています。
本来は垂直かつ同距離で入光するのが理想ですが、上記では角度で最大約20°程度、
距離で3%程度の差が考えられますので、その差を考慮する案です。
・フォトICダイオードの実装密度を高める
ユニバーサル基板では限界があり、プリント基板を作成することでさらに高密度に
実装し、分解能を高める案です。
5.実験のまとめ
今回は市販されている材料のみを使用して、CMOSイメージセンサの原理を実験的に確認することができました。
この実験をさらに高密度に実装し、カラー化(RGBなどへの分離)および動的な電気信号の読み出しを行うことで、CMOSイメージセンサの基本的な動作が実現できると考えられます。
実際の製品では、これらの基本原理に加え、さまざまなノウハウや高度な技術が組み合わさることで実現されていると思われます。
また、スマートフォン向けの小型イメージセンサや、自動車用途など過酷な環境下での使用など、CMOSイメージセンサは幅広い用途で活用されています。本実験を通じて、原理だけでは語りつくせない技術の蓄積があることを改めて感じる結果となりました。
