E-StationでCR回路を作る
コンデンサは電気を蓄える素子ですが、抵抗と組み合わせることで特徴のある挙動を示すようになります。このような回路を「CR回路」と呼んでいますが、どのようなものなのかを学んでいきたいと思います。
CR回路の回路図を図1に示します。


CR回路とは、図1のようにR(抵抗)とCを直列に接続し、Rに入力し、Cの両端を出力とする回路になります。これに矩形波(パルス波とも呼びます)を入力した場合にどのような出力を得られるかを見ていきます。実機動作の確認には弊社製品のE-Stationを用います。これには信号発生器、電圧計、電流計、オシロスコープ、ブレッドボードが搭載されており、これ一台で確認することが出来ます。(詳細はこちら→https://m-gic.com/e-station/) 今回はCは変えず、Rを3通りに変化した作成回路と表示波形を以下に示します。

図2(b)、図3(b)、図4(b)とRを変更すると波形の様子が変わることがわかります。Rの値が0.5k、1k、2kの順に変化の早さが早くなることがわかります。この変化の早さの度合いはCとRの値により決定します。CとRの積(CR)を時定数と呼び、回路の変化の早さを表現するために用います。時定数は入力電圧の0.632倍になる時間を表しています。
上記でCR回路では、時定数で表される変化の早さを変更することが出来ることがわかりました。「変化の早い/遅い」は言い換えると、「遅延が少ない/多い」と表現することもできます。このことから、CR回路を用いると、容易に任意の遅延量のパルス波を生成することが可能になります。この手法はデジタル回路の世界ではよく用いられる手法です。具体的なパルス遅延回路を図5に示します。

これまでの出力にデジタル回路のインバータを接続します。インバータとは反転動作をする素子になり、ここでは標準ロジックICの74HC04を使用します。H(5V)が入力された場合にはL(0V)が、L(0V)が入力された場合にはH(5V)が各々出力されます。図6にインバータ(74HC04)の端子図を、図7に入出力波形を各々示します。

前出の設定例と同条件にて動作させた作成回路と表示波形を以下に示します。

このようにCR回路を用いれば、入力された矩形波に対して、位相を遅らせた矩形波を容易に生成することが可能になります。しかし、変化点での波形が歪んでしまっています。標準ロジックICでは変化の早い信号が入力されることを前提としているため、今回のように変化が早くない信号を入力した場合には波形が歪む現象が発生してしまいます。この波形の歪みを発生しないために、標準ロジックICの変更を行います。
74HC14はシュミットトリガインバータと呼ばれる標準ロジックICになります。図11にシュミットトリガインバータ(74HC14)の端子図を示します。


端子配置としては、図6に示したインバータ(74HC04)と同じになりますが、ヒステリシス機能を持っていることが異なっています。ここで述べるヒステリシス機能とは、H入力とL入力を認識するための電圧値が各々異なるという機能になります。この内容を図12に示します。

次に動作を説明します。
①入力電圧が0Vから上昇していき、H認識電圧になると出力はHに遷移します。
②入力電圧が5Vに達すると、次は下降していきますが、L認識電圧までは出力はHを維持します。
③入力電圧がL認識電圧になると、出力電圧はLに遷移し、0VになるまでLを維持します。
変化が早くない信号の場合は★で示したように中間の2.5V付近を極小時間で行き来します。この時、ヒステリシス機能がある場合にはLあるいはHから変化しませんが、機能がない場合には出力はLとHが切り替わります。このLとHの切り替わりが波形の歪みとなっています。
前出の設定例と同条件にて動作させた作成回路と表示波形を以下に示します。


以上、CR回路の動作とディジタル回路への応用に関して述べてきました。これまでのことをまとめると以下のようになります。
①RとCを直列に接続した回路をCR回路と呼び、Cの電圧を出力とします。矩形波を入力に加えた場合、出力電圧は時間と共に変化しますが、CとRの積であるCRで変化の早さが変化します。なお、CRのことは時定数と呼びます。
②CR回路は、ディジタル回路では最も容易な任意の遅延回路として用いることができます。時定数を変更することにより、遅延時間も変更させることが出来ます。
③CR回路の出力は変化が早くないため、そのままディジタル回路に入力すると波形の歪みを引き起こします。これはヒステリシス機能を持つシュミットトリガインバータを使用することにより、改善することができます。
CR回路の説明は以上になります。
